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東京高等裁判所 昭和36年(行ナ)13号 判決

一、原告主張の請求原因一及び二の各事実は、当事者間に争いがない。

二、したがつて本件における唯一の争点は、本件実用新案の登録出願前、これと同一または類似のものが、国内において公然知られ、もしくは公然用いられていたかどうかである。

よつてこの点について判断するに、各その成立に争いのない甲第四号証(本件実用新案の出願公告公報であつて、これによれば、磨帯鋼亜鉛メツキ付テープを螺旋状に捲回しながらガス通孔を形成してなるガス管の捲回重合部にビニール細管を嵌装したものが、本件実用新案登録の出願前に知られていたことが認められる。)、乙第一号証の一、二、三(栗原弘が出願した実用新案登録願であつて、これによれば、同人は原告の本件実用新案登録出願前である昭和二十九年五月四日、金属螺旋管の外周に軟質ビニール樹脂の皮膜層を該管に密着せしめて形成した可撓性螺旋管の構造について、実用新案登録の出願をしているが、該金属螺旋管の重合部分にはパツキングが嵌装してあることが認められる。)乙第十五号証(訴外木俣清七、飯田稔の出願にかゝる実用新案の出願公告公報であつて、これによれば、同人等は原告の本件実用新案登録出願前である昭和二十九年五月十三日、金属螺旋管を芯管として、その外周側に塩化ビニールからなる軟質合成樹脂被覆層を全面的に被着し、かつ被覆層の合成樹脂を金属螺旋管の外周における螺旋状凹凸の凹部内に一体的に喰込むように密合してなる合成樹脂被覆可撓管の構造について実用新案登録の出願をしたものであることが認められる。)と証人川島好雄、木俣清七の各証言、これによつて真正に成立したと認める乙第二号証、乙第三号証の一、二及びその成立に争いのない甲第五号証とを総合すると、被告会社は、その代表取締役である栗原弘が出願した、従来公知の(甲第四号証参照)の金属螺旋管の重合部にゴムのパツキングを嵌装し、その外周に軟質ビニール樹脂の皮膜層を密着せしめたガス管の端部にソケツトを付したものを、原告の本件実用新案登録出願前である昭和二十九年七月七日その店頭において訴外三善産業株式会社に売り渡したものであること、そして該ガス管のビニール樹脂加工は、乙第十五号証で認定した実用新案登録の出願をした木俣清七、飯田稔が関与していた訴外鳩ケ谷ビニール工業株式会社が実施したもので、ビニール樹脂は螺旋管の重合部に形成される螺旋溝内に一体的に喰込むように密合せられていたものであることを認めることができ、証人飯田典彦の証言中右認定に反する部分は、当裁判所の採用し難いところである。

してみれば、本件実用新案とすくなくとも類似の構造を有するものが本件実用新案の登録出願前国内に公然知られ用いられていたものといわなければならない。

三、以上の理由により、原告の本件実用新案が旧実用新案法第三条第一号に該当するものとしてその登録を無効とすべきものとした審決は適法であつて、原告の本訴請求はその理由がない。

〔編註〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。

原告の主張(中略)

本件実用新案は、昭和二十九年八月十二日出願、昭和三十一年七月五日出願公告、同年十月五日登録にかゝるものであるが、その要旨とするところは、「磨帯鋼亜鉛メツキ付テープ(1)を螺旋状に捲回しながらガス通孔を形成するとともに、これらの重合部分に糸ゴム(2)を嵌装し、更にかく形成された筒状体の外周にビニール被層(3)を形成するとともに、テープ(1)の重合部に形成される螺状溝(5)内にビニール被層(3)の内周面を嵌入せしめ、かつ左右の両端にソケツト(4)を接着剤をもつて緊着して成るガス用螺旋管の構造」に存するものである。

審決はその理由において、「本件登録実用新案と類似の構造を有するガス用螺旋管が、本件審判請求人(本訴における被告)において、その出願前である昭和二十九年六月頃販売された事実は、昭和三十五年十二月九日当庁審判廷においてなした証人川島好雄の証言によつてこれを認めるに十分である。従つて本件登録実用新案は、その出願前国内において公然知られたものと類似し、旧実用新案法(大正十年法律第九十七号)第三条第一号の規定により、同法第一条の新規な実用新案と認められない。」としている。

しかしながら審決は次の理由によつて違法であつて取り消されるべきものである。すなわち審決は本件実用新案の登録無効の原因を明確な物的証拠によらずして、被告会社の元従業員である証人川島好雄の根拠薄弱な証言のみに求めた。そして被告の主張した出願前の公知事実は、本件実用新案の出願日より僅々四十数日を数えるばかりか、これを裏付ける確たる物証もなくして公知事実を認定したのは偏見であつて、これを要するに、審決は事実を誤認してなされた違法のものである。

被告の答弁

被告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、原告主張の請求原因に対し、次のように述べた。

一、原告主張の請求原因一及び二の各事実はこれを認める。

二、同三の主張はこれを否認する。

テープ状の磨帯鋼に亜鉛メツキしたテープを螺旋状に捲いて螺旋管を作り、その螺旋状重合部に糸ゴムを介在させることは大正年代既に存在しており、糸ゴム入り螺旋管の外周にビニール管を被覆し、かつビニール管の一部を螺旋管の外周溝部に嵌入せしめたガス用螺旋管は、被告会社の代表者栗原弘が昭和二十九年三月頃に考えて昭和二十九年五月四日に実用新案登録を出願している。この実用新案登録出願は登録請求の範囲が大きかつたために拒絶されたが、被告会社は右栗原弘の実用新案登録を出願したガス用螺旋管にソケツトを附したものを昭和二十九年七月八日訴外三善産業株式会社に売り渡した外、数人に売り渡している。

審決はこの事実を認定したもので、原告主張のような違法はない。

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